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巨大浚渫船上陸を「人間の鎖」で阻止 レイテ島住民、大統領へ事業停止を直訴

1052字||社会

レイテ州で、海岸から掘削地へ移動しようとする巨大砂鉄採掘用重機の搬入を阻止するため住民が「人間の鎖」を築いて抗議

巨大カッター吸引浚渫船の移動作業=©アバンテ

 ビサヤ地方レイテ州マッカーサー町の住民らが17日、海岸から掘削地へ移動しようとする巨大砂鉄採掘用重機の搬入を阻止するため、「人間の鎖(バリケード)」を築いて抗議した。また、マルコス大統領に対し事業停止の大統領令発付を求める書簡を送付した。

 住民が阻止したのは地元のマッカーサー・アイアン・プロジェクト社(MIPC)がチャーターした中国企業「中交广州航道局有限公司」所有の巨大なカッター吸引浚渫(しゅんせつ)船「華安龍」だ。中国Relong Tech社製で全長99・95メートル、幅15・40メートルの大きさで、海から陸上に移動して設置できる。

 MIPCは2020年から22年にかけても同地で採掘を行っており、砂鉄は中国へ輸出されていた。当時はパンデミック禍で約300人の雇用を生んだものの、農業用灌漑施設を破壊したとして、22年2月に地方自治体から操業停止を命じられ、昨年6月に灌漑施設の復旧を条件に活動再開が許可された経緯がある。

 現在、この砂鉄採掘権を所有する「ストロング・ビルト社(Strong Built)」は、ロムアルデス前下院議長の一族が所有する企業によって買収されている。採掘権は32年まで有効で、対象範囲はレイテ州第2・第3選挙区にまたがる7400ヘクタールという広大な面積に及ぶ。

 住民らは灌漑システム損壊のほかにも①前回操業時、採掘後の土地再生が約束されたが果たされなかった②採掘のためリースした土地の農業生産性が失われ、売却せざるを得なくなった農家がある③住民反対派住民への嫌がらせや農地への立ち入り制限が報告されている――などとして、採掘再開に強硬に反対しており、「採掘が始まれば家族を養う糧を失う」と危機感を募らせている。

 MIPC側は「必要な許可はすべて取得済み」と主張するが、地域の反発は町を越えて広がっている。アブヨグ町では事前協議の欠如を理由に、運営会社を「好ましからざる団体」に指定し、マヨルガ町も50年間の採掘凍結条例を再掲し、断固反対の姿勢を鮮明にしている。

 また、住民グループ広報担当のヘスス・カビアス・ジュニア氏は、採掘自体は国の政策であることを認めつつも、企業側が「12年の操業開始以来、土地再生の約束をまったく守っていない」と厳しく批判した。

 事業再開の背景にはロムアルデス前下院議長一族の政治的影響力も指摘されているが、住民らにとってこの闘いは、政治的な駆け引きではなく「食料安全保障と生存」をかけた切実な抵抗となっている。

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