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「国のための医師」法の実施を確実に 地方の医療アクセス向上と医師の育成急げ

1952字||社会|新聞論調

 1970年代、保健省が実施した「バリオ(村)への医師」(Doctor to the Barrios)事業を、私たちは懐かしく思い出す。この事業では、医師(および看護師)の国家試験の受験資格として地方で奉仕活動を行っていた。これは、試験結果が出る前に地方の人々に奉仕活動することで、都市部や海外で働く前に、地域社会に貢献する取り組みであった。

 その後、保健省や高等教育委員会(CHEd)による奨学金制度も散発的に設けられた。フィリピン大マニラ校は、医学部卒業生に対し、卒業後3年間は国内に留まることを義務付ける「帰還奉仕制度」を導入している。

 しかし、これらは全て体系的でもなく、予算の保証もなかった。それが、共和国法第11509号「ドクター・パラ・サ・バヤン」法(「国のための医師」法、2020年署名)の施行によって一変した。同法は医学教育へのアクセスを拡大し、医学生や医学部に対して奨学金や助成金を提供するものだ。

 同法は、CHEdに対し、1)各地域に1校ずつ公立医科大学を設置する、2)経済的に困窮している医学生に奨学金を提供する、3)政府の支援を受ける学生に対し奉仕義務契約を締結させる、4)CHEdと保健省に対し、医師免許試験に合格した医科大学卒業生の奉仕義務期間における就職先決定について協力することを義務付けた。

 当時のCHEd委員長であるプロスペロ・デベラ氏は、「公立医科大学を開設するならば、質が決して損なわれないよう厳格な基準を課さなければならない。また、州立大学が一流の私立校に匹敵する実験室や医療機器を備えられるよう、補助金や助成金を提供しなければならない」と述べた。上院もこれに同意し、新設された医科大学の校舎建設資金は、公立大学に直接交付された。

 同法が制定される前は、全国に公立医科大学はわずか8校しかなかったが、現在は医学課程を設置する公立大学が28校ある。これらの大学では、奨学金の支給、最先端の医療機器の提供、新しい校舎や寮の整備が行われている。

 2026年までに、3762人の医学生がCHEdの医学奨学金・帰還奉仕制度(MSRS)を通じて支援を受ける。この制度では、公立大学における授業料および諸経費が全額免除され、私立大学の学生には最大20万ペソが支給されるほか、年間17万7,000ペソの手当が支給され、包括的な健康保険および傷害保険も含まれている。

 しかし、デベラ氏は、この事業について、「地理的に孤立し、恵まれない地域で奉仕する医師を継続的に輩出するためには、持続的な資金提供、より良い運営、カリキュラムの改善、そして的確な支援策が必要である」と述べた。残念ながら、2024年以降、MSRS奨学生への予算は貧困層の学生数の増加に追いついていないし、CHEdも新規の学校開設を支援するのに必要なMSRSの資金を算出できなかった。予算管理省はCHEdと協議し、資金を確保するべきである。

 学生への奨学金もCHEdは確実に支払わなければならない。医学教育には多額の費用がかかるため、奨学金が期日通りに支給されない低所得の学生は中退してしまう。少なくとも5億ペソの年間予算が必要だが、CHEdが割り当てているのはわずか1億5000万ペソに過ぎない。100億ペソ規模の高等教育開発基金(HEDF)をこの目的に活用することができるだろう。

 公立医科大学には、十分な報酬を得ている優秀な教員が必要である。優れた教育者なしには、世界レベルの医師を育成することはできない。持続可能性は、医師兼教育者に対する競争力のある報酬体系とテニュアトラック(任期付き採用の後、審査に合格した者に終身雇用を与える制度)の確保にかかっている。これにより、地方での教育がマニラでの開業医としての仕事と同等のやりがいを持つようになるだろう。

 また、医学部が海外の大学と提携することも求められる。アデレード大学やデューク大学、シンガポール国立大学医科大学院との連携には、より多くの公立および私立の医学部が参加すべきである。さらに、対象者が地方医療に必要な臨床経験を積めるよう、公立病院のインターン・レジデント受け入れ体制を拡充する必要もある。

 最後に、教育課程をプライマリ・ケアのニーズと整合させる必要がある。単に症状を治療する臨床医を育成するだけでなく、地域の医療システムを管理できるリーダーを育成しなければならないからだ。

 私たちは長きにわたり、地方を軽視してきた。島々や山間部、そして辺境の町に住む多くの人々は、生涯一度も医師の診察を受けることなく生まれ、そして亡くなっている。この現状を変えなければならない。(4月28日・マニラタイムズ社説)

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