フィリピン料理月間によせて 伝統料理に加え自由な発想で比料理の発展を
4月は「フィリピン料理月間(FFM)」として知られており地域の食材を新たな視点で見直すきっかけとなっている。
先日、私は自身のポッドキャストのために、3人のフードライター、イゲ・ラモス、ナンシー・レイエス・ルーメン、フェリス・サンタ・マリアにインタビューした。イゲは若い頃博物館で働いており、人類学者らとも交流する機会があった。そこで研究とは、GoogleやChatGPTを使うことではなく、食材そのものを深く掘り下げ、源流に遡ることを学んだ。イゲは人類学者のような鋭い観察眼を持って旅をし、そして現地で人々に自らの食文化について語ってもらう際、同意を得ることを重要視している。
創業100年を誇る老舗レストラン「アリストクラット」を始めたドニャ・エングラシア・“アシャン”・レイエスの孫であるナンシーは、祖母から料理を学んだ。家族のレシピを受け継ぐことを大事にしているが、同時にフィリピン料理を枠にはめるのは間違いだと言う。受け継がれてきたレシピを大切にしながら、手に入る食材に合わせてアレンジし、革新を生み出すことが必要だと。
例えば、酸味を出す食材としては、カミアス、サントル、カトモン、サンパロック(タマリンド)、カマティス(トマト)、カラマンシー、スア、バトゥアン、などどんな酸っぱい果物でも使える。一方、アドボはターメリックを入れても、醤油なしでも、お気に入りの醤油ブランドを使っても、パーム酢、米酢、ココナッツ酢を使っても構わない。
料理人やシェフが、味覚を満足させる一品を生み出せる限り、どんなレシピもアレンジ可能だ。もはやレシピや食材の産地や起源に境界線を引くこともできない。人々は移動し、地域を越えて結婚もする。今では「ブリンヘ(もち米とココナッツミルクを使ったパエリア風料理)はパンパンガの料理で、クラウォ(焼いたココナッツのクリームを使った料理)はビコールの料理だ」などとは言えなくなっている。代表的なイロンゴ料理のカジョス・バボイ・ランカ(豆と豚肉、ジャックフルーツのスープ)に酸味を付けるバトゥアンという果実は、今ではリキュールやアイスティーなどに使われるようになった。
フェリスは、植民地化以前の食の歴史の研究に情熱を注いでいる。それは、植民者がやってくる前に私たちの先祖がどのように食べていたかという原点に立ち返るものだ。当時の人々は蒸したり茹でたり、グリルしたりといった調理法で健康的な食事をしていた。その後、スペイン人が濃厚な料理やオリーブオイルを、そしてアメリカ人が、缶詰や冷蔵庫、インスタントコーヒーといった便利なものを持ち込んだ。そのため、現在のレシピはより濃厚で複雑になり、当初のシンプルな形からはかけ離れたものになっている。
つまり、現代のレシピ本とは料理初心者のための手引きや参考であり、絶対的な真理ではない。今ではターメリックを使った新しいアドボや、スイカを使ったシニガンも受け入れられるようになっている。
だから、料理に堅苦しいルールを課すのをやめ、自由に工夫を凝らし、手に入る食材や旬の食材を別の方法で活用する方法を見つけてみてほしい。これまで知らなかった食材――サンピニット(野生のラズベリー)、リポテ(和名フトモモ)など――も試してみよう。フィリピン料理に境界はない。「フィリピン料理月間」とは、伝統的なレシピに新しい発想を取り入れることなのだ。
フィリピンの食材を称えよう。なぜなら、それこそが私たちの胃を満たし、何よりも私たちの魂を養ってくれるものなのだから。(11日・スター、チット・U・フアン氏)

