行政は各種ワクチンの無料提供充実を 国民の「躊躇」ではなく「手が届かない」状況
比国民は再びワクチン接種に対して前向きになりつつある。これは、過去のワクチンに対する信頼低下からの大きな転換である。しかし、依然として障壁は残っており、特に法外な費用が、多くの人々にとって命を救うたった1回の接種さえも妨げている。弊紙ではこれまで、専門家らの言葉を引用し、問題はもはやワクチンへの躊躇ではなく、経済的な負担にあると指摘している。
政府は、BCG(カルメット・ゲラン菌)、B型肝炎、5種混合ワクチン、PCV(肺炎球菌結合型ワクチン)、麻疹・おたふくかぜ・風疹(MMR)、経口ポリオワクチン(OPV)および不活化ポリオワクチン(IPV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの無料接種を提供している。これらは、バランガイ(最小行政区)の保健センターなどで年間を通じて利用可能であり、乳幼児、高齢者、および基礎疾患のある市民を対象としている。
しかし、インフルエンザ、帯状疱疹、腸チフスなどのワクチンは自己負担となる。これらの費用は1000ペソ未満から9000ペソ程度になることもある。現在の経済状況下では、こうした費用は生活必需品の購入を圧迫する。
感染症の専門家であるロントジーン・ソランテ氏は、新型コロナウイルスのパンデミックが、10年前のデング熱ワクチンをめぐる騒動によって引き起こされた比人のワクチンへの不信感を和らげるのに大きな役割を果たしたと指摘した。2016年、デング熱ワクチンの接種を受けた児童14人が死亡した事件だ。死亡者数はワクチン接種者数72万9105人のうちごく一部に過ぎないが、多くの保護者に多大な影響を与えた。
例えば、2019年に発生した麻疹の流行では、比で3万1056人の感染者が確認され、そのうち415人が死亡した。世界保健機関(WHO)は、この事態の原因を、小児に対する定期予防接種の普及率の低下にあると指摘した。
WHOは「比では、過去10年間で麻疹ワクチンの1回目接種率が低下しており、2008年の80%超から2017年には70%未満へと低下した。2018年の暫定数値は、さらなる減少を示している」と2019年2月に報告。WHOは、5歳未満の比人児童のうち260万人が麻疹に対する免疫を持っていないと推定し、予防接種率が低迷すれば周期的な流行が起こると予測した。
ところが2024年までに、麻疹の予防接種率は80%に戻り、人々の意識に変化が見られた。これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の最中に明らかになった。2021年にフィリピン大学が行った調査では、一部にワクチン接種への躊躇が見られたが、その後、接種率の回復が確認された。これは、国民が予防接種の価値を認識したためだと考えられている。しかし、政府が新型コロナワクチンを無料で提供したことも、重要な要因の一つであった。
保健省の広報担当者アルバート・ドミンゴ氏は最近、現在の経済状況下ではワクチンの無料提供には予算上の問題があると認めた。ソランテ氏は、患者が経済的に困難な状況では、医師がワクチン接種を勧めるのは難しいと指摘した。医療費の自己負担は比の家庭を圧迫しており、家計債務の第三の要因となっている。
多くの家庭にとって、食卓に食事を並べるか、ワクチン代を支払うかの選択は明白だ。しかしワクチンは贅沢品と見なされるべきではなく、1日3食の食事と同じくらい不可欠なものとして捉えられるべきだ。また、今こそ地方自治体が、国からの税収配分の一部をプライマリー・ヘルスケアに充て、住民へのワクチン提供を含む取り組みを行うべきである。
フィリピン開発研究所(PIDS)による最近の調査によると、地方自治体によるプライマリー・ケアへの支出は、1人あたり800ペソを超えることはほとんどなく、保健・栄養サービスを提供するために必要な約1827ペソには及ばないことが示された。同シンクタンクは、より裕福な地方自治体であっても支出が不足しているのは、資金不足ではなく、優先順位の誤りによるものであり、予算がインフラ事業などに流用されているためであると指摘した。
これは、政府が公衆衛生を軽視していることを露呈している。何十億ペソもの資金を道路、橋梁、校舎に注ぎ込んでいるが、その資金は汚職によって浪費されており、本来なら切実に必要とされている医薬品の購入に充てられたはずだったのだ。
政府はかねてよりワクチン接種への躊躇を嘆き、それが疾病や感染拡大の原因だと非難してきた。しかし、人々の意識が変わった今、政府はこの好機を活かし、命を救うワクチンを含む医療分野に資源を投入すべきである。(19日・インクワイアラー)

