内山安雄のフィリピン&アジア取材ノート第216回 ヘンだけど憎めない人々 その3
タクシー運転手に関してアジアでは困った人材に事欠かない。困った輩が多すぎる。
フィリピンの首都郊外に位置するアンヘレスへ、日本人の友人を訪ねたおりのこと。
そこはマニラからだと車で三時間はかからないだろう。街の中心部からわずか十五分ほどのところにクラークという、元駐留米軍が使っていた地方空港がある。
夜明け前にゴーゴーバーだらけの歓楽街に近いホテルが手配してくれたタクシーでその小さな空港に向かう。
とてもハイテンションで愛想のいい運転手さんにあたる。
「ダンナ、夜遊びしたのに早起きでさぞや眠いでしょう」
「仕事での滞在だから夜遊びの時間なんてなかったよ」
「日本人がクラークくんだりにきて遊ばないなんてご冗談でしょう。まあ、いいや、へへへへ。空港に着いたら起こしますんで、ぐっすりと遠慮なくどうぞ、どうぞ、リラックスしてどうぞです」
そう勧められても、ぐっすり眠っているような距離ではないはず。
たったの十五分なのに妙なことをいう運転手だな、な~んて思いながらシートに深く腰を沈めていたところがーー。
かれこれ小一時間も走っているというのに、なんとまだ殺風景な高速道路の上ではないか。いくらなんでもおかしい。クラーク空港にしては遠すぎる!
「おいおい、いったいどこへ向かってるんだい?」
「当然でしょう、マニラの国際空港ですよ。どうかご心配なく」
「ご心配だよ! 違う違う! 行き先はクラーク空港だよ!」
「えっ、マニラじゃない? なんてこった! 私、いつもお客をマニラ国際空港に、ニノイ・アキノ国際空港に運んでいるのに」
そんなこと、こっちの知ったことか!
行き先を急遽クラーク空港に変更して猛スピードで飛ばしてもらう。香港行きの出発時間に間に合わないかもしれない。
「ダンナさんよ、なんてこった!」
そう叫びたいのはこっちのほうだ。
経緯を確認するために怒りを抑えてスマホでホテルに照会してみる。
「当フロントではマニラ国際空港だなんていっていないと思います。ドライバーにはクラーク空港といったような……。いや、違っていたのかな……」
ええい、心許ない。どいつもこいつもあてにならない、頼りにならない、と無駄に怒ってはいけないのか。これも何かとおおらかなフィリピンならではのことなのだろう。
誰にも悪気はない、ただちょっとばかりいい加減なような気が……。
ええい、もうどうでもいいわい。空港にちゃんと着いてくれさえすればいいのだ。お願いだから神様仏様、いや、キリスト様!






