欠陥鉄鋼で構造物崩壊の恐れ 放射性物質汚染も、中国人69人逮捕
放射能汚染のスクラップ密輸や欠陥鉄鋼の流通で東ミサミス州タゴロアンの中国人所有製鉄会社摘発
大統領府組織犯罪対策委員会(PAOCC)と国家捜査局(NBI)は19日、ミンダナオ地方東ミサミス州タゴロアンで家宅捜索を受けた製鉄会社「フィリピン・サンジア・スチール」について、政財界に広がる広範な癒着ネットワークの本格的な捜査に着手したと発表した。同工場からは基準値を大幅に超える放射性物質が検出されたほか、不法に流通した建築用鉄鋼の強度不足による構造物崩壊が危惧されている。
同日の記者会見でPAOCCのベンジャミン・アコルダ次官(前国家警察長官)とNBIのメルビン・マティバグ局長は、同社の幹部らが現職および元政府高官、民間機関の有力者らと深く繋がっていると指摘。マティバグ局長は、現在、同社の創設メンバーであるフィリピン人3人と中国人の男2人の計5人の行方を追っていることに言及し、「不法操業に関与した容疑者には、現職・元職を問わずすべての政府高官を含めて例外なく刑事訴訴を行う」と強い決意を表明した。
先週16日に行われた大規模な強制捜査では、不法就労していた中国人の男69人が現行犯逮捕され、地元当局の勾留下で比原子力安全法(共和国法12305号)違反の容疑による捜査が進められている。さらに、消費者保護法、労働法、および出入国管理法違反の罪にも問われる見通しだ。
当局の合同捜査により、同工場が中国から密輸入したスクラップ(金属屑)は、「ウラン238」「トリウム228」「トリウム232」などの極めて危険な放射性元素に汚染されていたことが判明している。比原子力研究所(PNRI)の現地調査でも、工場の倉庫や製造エリア一帯から極めて高い放射線量が検出された。アコルダ次官は、「サンジア・スチールでは危険物質の違法保有、労働基準違反、移民法違反、そして消費者安全への裏切りなどの重大な犯罪行為が日常的に行われていた」と厳しく非難した。
家宅捜索に伴い工場の操業は全面停止されたが、NBIは現場から比人労働者120人を「救出」したと発表した。マティバグ局長は「救出」という表現を用いた理由について、「逮捕された中国人の幹部らは全員が高度な放射線防護服を着用していたのに対し、最前線で働かされていた比人労働者には何の防護具も与えられていなかった。会社側は放射能汚染の事実を知りながら、比人を危険に晒していた」と激昂。保健省(DOH)は、現在のところ救出された労働者に急性放射線症候群の症状は見られないとしているが、社会福祉開発省(DSWD)と雇用労働省(DOLE)が母子や労働者への精神社会的ケアと生活支援に乗り出している。
さらに国家的な脅威となっているのが、同工場が製造・販売していた建築用鉄鋼製品の「致命的な欠陥」だ。貿易産業省標準局(DTIーBPS)の品質測定結果によると、同社の鉄鋼は質量変動、伸長率、表面変形などのすべての強度試験で基準値を大きく下回っていた。マティバグ局長は、これらの劣悪な鉄鋼がすでに国内のビル、橋梁、学校、病院といった重要インフラの建設現場に大量に流入・使用されている可能性が極めて高いと警告し、構造物の変形や倒壊などの壊滅的なリスクに強い懸念を示した。
この製鉄所は、ドゥテルテ前大統領の経済顧問を務めた中国系ビジネスマン、マイケル・ヤン氏の兄であるトニー・ヤン氏が実質的に所有している。ヤン一族を巡っては、国内で数々の犯罪や拉致、脱税の温床となった違法オンラインカジノ(POGO)組織との深い関わりが議会で追及されてきた。同工場は2018年10月17日に操業を開始しており、前政権の庇護のもとで約8年間にわたり暗躍を続けていたとみられる。
トニー・ヤン、マイケル・ヤン両氏はドゥテルテ前政権の「闇の核心」とされる中国系の一族。弟のマイケル・ヤン氏は前大統領の公式・非公式の経済顧問として政界に絶大な影響力を誇り、コロナ禍における医療物資調達汚職の黒幕としても名が挙がった。兄のトニー氏が率いる今回の製鉄会社は、カジノ資金のマネーロンダリングや、中国からの不法労働者の受け入れ隠れみの(フロント企業)であった疑いが濃厚となっている。








