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民主主義の後退と権威主義の浸透に抗う 市民によるメディアの構築を

972字||社会|新聞論調

 私が情熱を注いできた活動の一つに、国や民間企業ではなく、地域の人々による組織が所有する公共放送システム(PBS)の設立がある。しかし、商業主義と娯楽文化が支配的な社会では、第一に重視されるのは収益性で、私の活動は時期尚早だった。とはいえ、このところは考え方が変わりつつあるようだ。幸福や調和、文化的アイデンティティへの深い認識が、長期的には物質的・経済的な目標の達成に寄与し得ると気づく人々も現れている。

 地域密着型のFMラジオ局が公共放送システムとして運営されていることは、新たな希望だ。コルディリエラ地方にある「ラジオ・サガダ」は、山岳先住民族によるコミュニティラジオ局であり、米国拠点の先住民族支援のNGO「カルチュラル・サバイバル」やその他の非政府組織からの資金援助を受けて2011年に放送を開始した。これは、先住民族が運営するコミュニティラジオ局としては最初であり、現在も存続している唯一の放送局である。

 そのビジョンは、「豊かな文化と伝統を持ち、調和のとれたコミュニティに暮らす、知識豊かな人々となり、持続可能な開発、良き統治、そしてコミュニティの発展のために活動する」というものだ。2024年5月には、同団体による学生インターンシップの斡旋、防災啓発、選挙報道の充実、農業イノベーションの支援といった貢献が評価され、フィリピン大学ロスバニョス校にて地域放送功労賞を受賞している。

 2023年、ラジオ・サガダの運営陣は、デジタル化への一歩を踏み出した。本稿は、私の団体のインターンであるヘスサ・レグア氏の修士論文草案に基づいたもので、彼女はこのラジオ・サガダのデジタル化の過程や戦略、課題について研究している。今後はさらに地方自治体職員や地域のステークホルダー、先住民族のメンバーらと議論を深め、SNSやライブ配信のようなコンテンツが、ラジオ・サガダのビジョンに貢献するかどうかを明らかにしていく予定だ。

 このようなかたちで公共メディアや市民所有のメディアのシステムを構築する際の経済的・社会的コストを評価することは重要である。特に、政治王朝の台頭に見られるように、民主主義が次第に後退し権威主義が浸透するさまを目の当たりにしている現在においてはなおさらである。(4日・マニラブレティン、フロランヘル・ブライド氏)

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