内山安雄のフィリピン&アジア取材ノート第215回 ヘンだけど憎めない人々 その2
スリランカ取材でちょっと困ったガイドを雇い入れてしまう。別に私を騙したり危害を及ぼしたわけではない。が、やはりガイドとしては相当に問題ありなのだ。
数日間も専属の運転手をかねた彼との付き合いで次第に辛抱たまらなくなってくる。なんたってこの若者、カーステレオのボリュームをいっぱいに上げて、ずっと大音響をとどろかせるのだ。スリランカの民族音楽やポップスというならばさして文句はない。
ところが奴さんがのべつ幕なし垂れ流しているのは音楽などではなく、ズバリお経である。偉いというお坊さんたちが経典をえんえんと、そう、エンドレスで唱えるのだ。
これをドライブの最中、休みなく聞かされるのだから次第に頭の芯が痛くなってくる。
「他の音楽CDにしてもいいんじゃないの?」
「いやいや、お経を聞いていると落ち着いて運転に集中できるんだ。ダンナも仏教徒なんだから、この思い、よ~くわかるだろう?」
わからねえよ、ちっとも落ち着かねえよ。迷惑千万だが、年がら年中暇さえあればお経を聞いて自分でも唱えているんだとか。
人サマの宗教に口出しするとろくなことにならない――と歴史も私の体験も教えている。よってじっと我慢するしかないのだった。
さらにこのガイドさん、行き先に関して私のいうことを時にまるで聞こうとしない。
「私の旅行は取材仕事であって、観光が目的ではないからね。そこんところ、よろしく」
そう毎朝出がけに断っている。にもかかわらずちょっと油断すると、例のお経CDを聞きながら何やらブツブツつぶやいて頼んでもいない場所に私を連れ込もうとする。
「ダンナ、喉が渇いたから最高に美味しいお茶を飲みましょう、タダだから」
おごってくれるというのか? そうではない。広大な敷地を持つ観光お茶園に乗り入れ、問答無用で私を買い物コースに放り込むのだ。
そして翌日にはもう同じことをするな、と朝のうちから断っているというのにーー。
ちょっと油断をして居眠りをしていると、いきなり停車したのはアーユルヴェーダの店舗兼農園ではないか。
「ダンナ、旅の疲れでなんだかお肌がちょっと荒れてるみたいだね。ここで売ってるものなら安全保証付きでだいじょうぶ」
農場付きのやる気のなさそうなガイドが、手順どおりに私を引きずり回す。で、私が何も買わないとわかると、嫌みったらしく顔をしかめ、小さく舌打ちをしてみせるのだった。
全て我がガイドのコミッションほしさの所業である、やれやれ。
が、私に特段の損害を与えるわけでも、許しがたいほどの失礼を働くわけでもない。
このくらいのことはアジアなのだから許容してやらねば、であろう。それにしても、本心はやはりやれやれなのだ。かつてのフィリピンではよくあった話だが、今はどうなんだろう?






