フィリピン新聞

マニラ
31度-21度
両替レート
1万円=P3,690
$100=P5780

恩義の感覚が伝統的政治を助長 世襲政治撲滅法を求める声

1187字||社会|新聞論調

 アテネオ行政大学院が1988年から2019年のデータを分析した論文(2019年発表)は、地方の公職における特定の一族の政治支配が1988年の19%から2017年には29%(選挙期間あたり約170議席)に拡大したことを明らかにした。2001年には親族2人からなる「世襲政治家」が1303議席、3人は257議席、4人以上では157議席であったが、2019年にはそれぞれ1548、339、217に増加した。 

 また比の科学者団体「人民のための科学技術擁護者(Agham)」は、地方・国家の要職を世襲政治家が占拠している実態を指摘した。上院議員で99%、下院議員で67%、州知事80%、市長63%が該当する。

 これでは議会そのものが憲法第2条第26項の法制化を進めないのも当然だ。同条項は、公職への平等なアクセスの保障、世襲政治の禁止を義務付けている。特権を自ら解体する法律を、立法者が可決するはずなどない。しかし、汚職が横行する洪水対策プロジェクトの調査で汚職実態が明らかになるにつれ、ついに世襲政治撲滅法案を可決せよとの声が高まり、上下両院で複数の法案が提出された。

 その中には、アクバヤン党議員の法案が含まれており、現職の選挙公職者との4親等以内の血縁関係または姻戚関係にある者は、当該現職者が同一選挙年度内に任期満了となる場合を除き、公職に立候補または就任することを禁止する内容である。一方で、ファウスティノ・ディ議長の法案は、親族が選挙職を交代・代行・継承することを認める内容であるため、関係者は権力の独占を維持するものだとしている。

 一連の公聴会は、世襲政治に対する民意を測る有効な手段となり得るが、確かに、困難な道が待ち受けている。フィリピン人の強い「恩義(ウータン・ナ・ロオブ)」の感覚が、公共事業を政治家からの個人的な恩恵と見なす有権者層の抵抗を生み出しているからだ。公聴会からは世代間の溝も明らかになった。年配層は馴染み深い名前に固執する一方、若者は「能力も地位も相続されるものではない」と伝統的政治を非難する。

 政治「王朝」は権力の集中ばかりか、議員の家族の事業に有利な法律を可決するなど経済的コストも伴う。比開発研究所によれば、こうした世襲政治は最も貧しい州で最も蔓延しており、社会的経済的発展を阻害している。

 真の民主主義社会では、誰もが立候補し公職に就く機会が保障される。世襲政治撲滅法は競争を平等化するものだ。同法の詳細を詰めるための公聴会は重要だが、議会が40年間にわたり憲法上の義務を回避し続けてきたことを改め、法案を成立させる政治的意志を固めることが極めて重要である。最近の公聴会に参加したある人物が指摘したように、「一般国民は日々犠牲を払っている。政府高官も同様に犠牲を払う時が来たのだ」。(20日・インクワイアラー)

社会