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中国が「バタネスは領土」と主張 「比の主権は明確」と安保会議反発

1709字||政治

中国の研究機関らがルソン島北部のバタネス諸島を「法的には中国の領土」と主張。比政府は反発

伝統的なカヌーでバタネス諸島に渡る航海を再現した台湾先住民タオ族
伝統的なカヌーでバタネス諸島に渡る航海を再現した台湾先住民タオ族=台湾原住民族委員会より

 中国共産党系紙「環球時報」など中国メディアは9日までに、ルソン島最北部バタネス諸島が「中国の領土である」とする中国の研究者らの見解を報じた。それに対し、国家安全保障会議(NSC)は10日、「深刻な懸念をもって見ている」とし、「この点に関して曖昧な点はない。バタネス諸島はフィリピン共和国の不可分かつ不可分な一部だ」との声明を出した。比国家歴史委員会(NHCP)も反論を公開した。

 中国側の動きは、5月のマルコス大統領と高市首相の会談で海洋境界協議を行うことで合意したことを受けたもの。琉球(沖縄)の日本への帰属に疑問符を付ける中国学界の主張とも類似しており、中国が「完敗」を喫した南シナ海仲裁裁判判断の10周年を前に、「歴史戦」を強化していると言えそうだ。

 ▽根拠はパリ条約だが

 環球時報などによると、5月の比日首脳会談で比日間で海洋境界協議を行うことで合意したことを受け、中国広州では先月30日、南京大学、浙江大学、厦門大学など複数の研究機関がシンポジウムを開催。

 参加した研究者らは、「米西戦戦争の講和条約である1898年のパリ条約が定めたフィリピン領域の北限である北緯20度より北にあり、比の独立を定めた1946年の米比一般関係条約にも引き継がれている」として、「法的にはフィリピン領ではない」と主張。

 さらに、同諸島は台湾島の「自然な地理的延長」で、バタネス諸島先住民イバタン人と台湾・蘭嶼のタオ人が言語、習慣、地下式住居を共有し、祖先も3000~4000年前に台湾方面から移住したほか、清代には中国漁民の伝統的漁場だったと指摘。これらを根拠に中国領だと結論付け、5月の日比首脳会談で合意したの海洋境界協議について、「中国を排除して権益を侵害する無効な行為」だとして、中国海警局の常態的巡視や軍事的抑止の強化を提唱した。

 ただし、割譲地の補足条約である1900年の米西ワシントン条約では、パリ条約の境界線外にある「フィリピン群島に属するすべての島々」をスペインが米国に譲渡すると明記しており、これは1946年条約にも引き継がれているため、北緯20度線だけでフィリピン領を画定する論法は必ずしも成り立たない。

 ▽比の歴史学者も反発

 バタネス州選出のシリアコ・ガト下院議員も、「重大な懸念」を表明した。ガト議員は「バタネスは比共和国の州であり、イバタン人は比国民だ」と述べ、比の主権を疑問視する動きは地政学的な挑発にとどまらず、「住民のアイデンティティーに対する侮辱だ」と非難した。

 比国家歴史委員会も学者らの主張を否定。フィリピンや各国の衛星・海洋学データは、北部ルソンからバブヤン、バタネス両諸島を経て台湾諸島の一部まで連続する大陸棚を示しており、この観点からも比側により強い権利があるとの見解を示した。

 NHCPによると、英国人探検家ウィリアム・ダンピアが1687年に残したバタネス諸島の詳細な記録にも、中国による統治の形跡はないという。イバタン人は保護された共同体で暮らし、各地の海洋交易民と取引していたことが、100年以上にわたる考古学・歴史研究で確認されているとした。

 同委員会は、スペインが1783年にバタネス諸島をカガヤン州の一部として正式に編入して以降、比政府とその法的前身が継続的に主権を行使してきたと説明。1896年の比革命とフィリピン第1共和国の時代にも同諸島は国土の一部と認識され、住民はマロロス議会とその後の各議会に代表を送ってきたと指摘した。

 「第2次大戦後に日本がバタネス諸島を中国へ返還すべきだった」との中国側の主張については、「日本は比に属する領土を中国に与えることはできない」と反論。住民は1945年初めまでに日本軍の支配から自力で解放されていたとして、同諸島が比領であることに疑いはないと強調した。

 なお、比日の海洋境界協議について、台湾は歓迎の意を表明している。先月には、台湾海巡署とフィリピン沿岸警備隊の協力のもと、台湾先住民タオ族が伝統的なカヌーでバタネス諸島に渡る航海を再現している。(ロビーナ・アシド)

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