「悲願」の貧困率1桁達成 3年前倒し、統計基準・実感差問題も
25年の貧困率は過去最も低い9.7%。フィリピン経済「悲願」の1桁達成
フィリピン統計庁(PSA)は21日、2025年通年の人口ベースの貧困率が9・7%となり、23年の15・5%から5・8ポイント低下したと発表した。世帯レベルの貧困率は23年の10・9%から6・4%に減少した。貧困人口は約1754万人から約1108万人へ約646万人減少した。
貧困からの脱却はフィリピン経済にとって歴史的最重要課題の一つ。1985年の公式貧困率では49・3%と人口の半分が貧困層だったフィリピンで、貧困率が1桁台に下がったのは史上初。マルコス政権下で策定された現行の開発計画(PDP)は2028年までの1桁台達成を目標に掲げていたが、3年前倒しで実現した。PDPの28年目標は8・8~9・0%であり、厳密にはまだ28年数値目標を達成していないとはいえ、フィリピン経済にとっては「悲願の達成」。政権にとって大きな「レガシー」を統計上では作った。今月初めに世界銀行がフィリピンの「上位中所得国」入りを発表したことに続き、フィリピン経済が新たなステージに入ったことを象徴する数字だ。
現政権で開発計画を策定した貧困研究の権威、バリサカン経済企画開発相(元フィリピン大経済学部長)は「初めて、貧困線以下で暮らすフィリピン人が10人に1人を下回った」とし、経済機会の拡大と社会保障政策が貧困削減につながったとの認識を示した。
バリサカン氏は一方で、2026年の経済環境が厳しさを増す中、今後は貧困削減のペースが鈍化する可能性があると指摘。「現時点での動きは貧困削減を遅らせる可能性があるが、これまでの成果が逆転する兆候はない」と述べた。経済成長の早期回復や投資、生産性、雇用の拡大、成長分野に対応した労働者の技能向上などを課題に挙げた。
▽貧困線の低さの問題も
PSAの貧困率は、まず地域ごとに推奨摂取エネルギーなどを満たすための最小食費をベースに食料貧困線を算出し、それから計算した貧困線に基づき計算する。2025年の全国平均の貧困線所得月額は5人家族で1万4634ペソ、1人当たり2927ペソだ。
しかしこれまで、公式統計の貧困線の設定が低すぎるという批判も巻き起こっていた。24年には食料貧困線を1人の1食あたりで計算すると21ペソしかないことが指摘され、大きく批判を浴びた。PSAのマパ長官は当時、食料貧困線が不十分と認め、計算方法の見直しを宣言。昨年には見直し過程で1人1日約84ペソ、1食あたり約28・1ペソとなる水準が示され、従来水準から30%以上引き上げられた。11月にはPSA理事会が正式承認した。
ただし、今回の貧困率統計は、昨年7月と今年1月に実施された家計所得支出調査(FIES)に基づく。今回のPSA発表では、2023から25年にかけての貧困線所得の上昇は1万3873ペソから1万4634ペソで、増加率は5・5%。貧困線所得の約7割が食料貧困線所得に相当することや、新たな全国参照食料バスケットの承認が昨年11月だったことを踏まえると、改定基準はまだ適用されていないとみられる。
同じ基準での時系列比較である限り、今回の統計の正当性は担保されているものの、PSA自身が「不十分」と認めた食料貧困線の延長線上で計った貧困率となる。
▽体感では4割が「貧困」
それを補完する指標として重要性を持つのは、生活者の体感に近い、民間調査機関による「自己評価貧困率」だ。
最新のものは民間調査機関OCTAリサーチが7月に実施したものだが、同調査では自らの世帯を「貧困」と評価した割合が3月の35%(約920万世帯)から39%(約1030万世帯)に4ポイント上昇した。過去3カ月間に食べるものがない経験をしたとする自己評価飢餓率も、3月の17%(約450万世帯)から21%(約560万世帯)へ4ポイント上昇した。
さらに悪いのが、民間調査機関の「老舗」ソーシャルウエザーステーション(SWS)の6月調査だ。同調査では、自己評価貧困率は49%。自己評価食料貧困率は36%だった。SWS調査による自己評価貧困線の全国中央値は1世帯月あたり1万4000ペソ。金額だけをみればPSAが示す5人家族の全国平均貧困線1万4634ペソに近いが、両者は定義が異なり、貧困率には約40ポイントの差が出ている。








