医師不足に悩む地方での奉仕活動を支援 医学部生向け奨学金プログラムが開始
あるジャーナリスト仲間が最近、海外出稼ぎ労働者(OFW)として帰国したばかりの母親を、マニラ首都圏の公立病院に緊急搬送した際の体験を語ってくれた。「午後10時に病院に到着し、混雑した廊下で待たされた末、ようやく真夜中頃に診察を受けた。医師たちは明らかに疲れ切っていた」と、その記者は語った。結局緊急のケースではないと言われ、午前2時頃、彼らは帰宅を決意したが、免責同意書への署名が必要だと言われた。そして、その手続きにさらに3時間かかった。医師がとにかく不足しているのだ。
確かに、フィリピンでは深刻な医師不足が起きている。アテネオ・デ・マニラ大学の調査によると、2025年時点で人口1万人あたり約7.92人の医師しかおらず、世界保健機関(WHO)が推奨する最低基準である同10人を下回っている。特に医療サービスが行き届かない地方に住む患者たちは、さらに厳しい状況に置かれている。
だからこそ、セント・ルークス・メディカルセンター財団が実施する「バリオ(地方の集落)へ赴く医師」のための奨学金プログラムを知り、私はとてもうれしくなった。この「ドクターズ・フォー・エブリ・フアン(Doctors for Every Juan)-地域医師のための授業料無料奨学金」プログラムは、同財団がウィリアム・H・クアシャ記念セント・ルークス・メディカル・センター医科大学と提携して進める先駆的な取り組みだ。
同財団代表のベンジャミン・カンポマネス医師によると、この事業は、優れた学業能力と地域奉仕への強い意欲を持つ優秀な学生が医学博士号を取得できるよう、医学部在学中の全期間にわたって経済的支援を行うもの。奨学金パッケージには、授業料およびその他の学費の全額、月額生活費、住居支援、衣類手当、ノートパソコンおよび通信費の支援、実家への帰省のための年2回の往復交通費、ならびに医師免許試験の対策費用および受験費用が含まれる。
奨学生はその見返りとして、医療サービスが行き届いていない地域に同財団が設立した診療所で、5年間にわたり勤務することを誓約する。この奉仕期間中、奨学生は財団から十分な給与と福利厚生を受け、医療の提供と地域医療体制の強化に専念できる。財団としても、この事業を通じて、医療への公平なアクセスの改善に向けた国家的な取り組みに貢献できるとしている。まずは2026年度から5名の奨学生を受け入れ、数年間で事業を拡大する計画だ。医療資源に乏しい州からの応募が優先される。
医科大学への進学をどれほど望んでいても、高額な学費のために進学を断念せざるを得ない人は大勢いる。一方で、医師になった後、教育費を回収するために、地方ではなく都市部で働くことを選ぶ人も多い。さらに問題を深刻にしているのは、給与の高さを理由に、多くの看護師や医師が海外での就労に心を惹かれていることだ。同財団は、この奨学金プログラムにより、より多くの医師が地域社会に根差した診療を行うようになることを期待している。
この事業は、医師を目指す若者たちだけでなく、医療へのアクセスが容易でない遠隔地の国民の生活をも変えるだろう。地方のコミュニティで奉仕する将来の医師たちが、最も必要とされている場所に留まることを選んでくれることを願う。(3月30日・スター、アイリス・ゴンザレス氏)

