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迫るエルニーニョに水源確保なしの政府 国民にバケツ買わせる大統領の水不足対策

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 バケツで雨水を貯めることを提案したのはマルコス大統領が初めてではない。

 フィリピン大地質学教授のマハール・ラグマイ氏は、首都圏で繰り返される洪水について取材を受け、豪雨の際に住民が一斉にバケツで雨水を貯めれば、道路からの雨水流出を減らし、排水設備への負担を軽減し、洪水を最小限に抑えることができると語っていた。

 同氏は、2012年にノイノイ・アキノ大統領の任期中に発足した、科学技術省傘下の防災イニシアチブ「プロジェクト・ノア(Project NOAH)」の事務局長として知られる。続くドゥテルテ政権はプロジェクトへの資金提供を打ち切ったが、現政権下で、比大のレジリエンス研究所の下で引き継がれることとなり、「全国災害リスク評価(Nationwide Operational Assessment of Hazards)」に10億ペソの新規資金が投入された。

 マルコス大統領は、洪水の軽減ではなく、迫り来る「スーパー」エルニーニョに備えてバケツで雨水を貯めることを提案した。問題点は、雨水を長期間貯めると、蚊が繁殖することだ。

 続いて大統領府で行われたのが、社会福祉開発省による浄水キットの実演だ。20リットルのプラスチックバケツに取り付ける、持ち運び可能なもので、同省は、首都圏の高密度居住地域や被災地において無料で配布する予定だ。

 この浄水キットは、コレラやサルモネラ症の原因となる細菌、原生動物、さらにはマイクロプラスチックに至るまで、有害な微生物の99.99%を除去するとされている。実演の最後には、同省のガチャリアン大臣と大統領府報道官のカストロ氏が浄水した水を飲んだ。現時点では、両者が急性下痢で入院したという報告はない。

 このキットは確かに便利だが、メッセージの伝え方がうまくいったとは言いづらい。大統領は、世界の指導者たちと会話するという名目で、納税者の費用を投じ、F1グランプリが行われるシンガポールを訪問した。しかし、F1会場でシンガポールのローレンス・ウォン首相と会った政府首脳は彼だけだった。

 バケツの購入を国民に提案したのはその滞在中だった。もし彼が、少なくともシンガポールの洗練された保水・水再生システムや、廃棄物発電について、説明を求めていれば、国民も大統領の旅に何らかの意義を見出せたかもしれない。ところが実際には、F1期間中に大統領が出席できる会合を誰かが適当に探し回っただけだった。

 この「バケツ」提案は、比の水資源の不安定さも浮き彫りにした。カストロ報道官は、政府が貯水を呼びかける一方で、水道インフラは改善されつつあるとした。しかし、政府は、首都圏の民間水道事業者が配水するための追加の水源を確保するという合意事項を、いまだに履行していない。そうしたなか、水道事業者のマイニラッド社は、廃水を安全な飲料水に変える「NEW WATER」プログラムを展開している。

 アンガットダムは、依然として首都圏の主要な水源である。首都圏南部の水供給に利用されているラグナ湖は、猛烈な埋め立て工事により急速に縮小している。カリワダムの稼働も不透明だ。

 大規模な水道インフラの整備において、大統領にはもう時間が残されていない。彼は、国内の広範な地域が水と電力を欠いたまま、その任期を終えることになるだろう。

 そして、彼の政権の最後の数ヶ月間に残される光景の一つとして、給水ポンプの前に並ぶ「ピラ・バルデ(バケツの列)」が見られることだろう。(10月19日・スター、アナ・マリー・パミントゥアン氏)

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