西比海に初言及、偽情報問題も 中国念頭、英雄の日の大統領演説
マルコス大統領が英雄の日に、初めて「西フィリピン海」「偽情報」に直接言及。中国念頭に
マルコス大統領は31日、首都圏タギッグ市の英雄墓地、リビガンナンマガバヤニで開かれた「英雄の日」の記念式典の演説で、「領土を守る責任は国民全体が共有するものだ」と述べ、中国と緊張が高まる西フィリピン海(南シナ海で比が主権、主権的権利、管轄権を主張する海域)の権利や国益を平和的かつ合法的に守る方針を強調した。また、特に若者に海洋上の権利の由来や重要性を教えることが出発点だとし、「あらゆる媒体で真実を広め、偽情報に対抗し、責任ある議論を促す」と表明、7月の大統領施政方針演説に続いて偽情報への警戒を示した。大統領が英雄の日の演説で、「西フィリピン海」および「偽情報」に直接言及するのは今年が初めて。
大統領は、比沿岸警備隊(PCG)や国軍、漁業水産資源局(BFAR)、漁民が「権利、生活、国益を守る最前線にいる」とたたえた上で、「英雄の精神は、世代ごとに新しい姿を得るからこそ生き続ける」と指摘。領土を守るためには、国民一人一人が歴史や自国の権利を理解し、国益の保護に参加する必要があると訴えた。
漁民にも「無条件の支援が必要」とし、比海域で漁を続けることが海洋領域との結び付きを強めるとの認識を示した。
式典は英雄墓地の無名戦士の墓で行われ、大統領が献花。式典後、大統領は父の故フェルディナンド・マルコス元大統領の墓を訪れ、祈りをささげた。
テオドロ国防相はメッセージで、国防省と国軍は自由、平和、国民の福祉を守る取り組みを続けると表明し、「これは祖先だけでなく、将来世代に対する神聖な義務だ」と述べた。
▽演説の変遷
スペイン植民地時代のフィリピン革命の起点、「プガド・ラウィンの叫び」に由来する「英雄の日」の演説では、何を守るために戦うかに関して大統領の重視する問題が反映されてきた。就任直後の22年はコロナ禍からの復興、コロナ禍を脱した23年は日常の経済・社会活動に従事する一般国民を「名も無き英雄」とたたえた。
ところが、南シナ海での中国との対立が鮮鋭化した24年は、南シナ海・西フィリピン海という固有名には触れなかったものの、「主権防衛」を強調、「海洋境界を防衛する海軍および沿岸警備隊」を明示的にたたえ、さらにジャーナリストによる「真実」を伝える役目を強調した。
中間選挙を経て治水汚職との戦いを開始したばかりの昨年は、国内汚職との戦いに多くを割いた一方、「欺瞞を見抜く市民」といった情報戦も示唆した。
中国国営メディアによる比をサルに戯画化した「中傷動画」問題など偽情報問題が一段大きく取り上げれられた今年は、西フィリピン海、偽情報問題が一本の線でつながったかたちで明確に取り上げられた。
若者への愛国メッセージも年を追って強化。22年はコロナ禍での学校再開とそれを支える教師らへの称賛、23年は英雄の物語を次世代に伝え、国民的アイデンティティーと結束を育むという内容だったが、24年には歴史を学び愛国心を培うことをより明確に強調。中間選挙でのドゥテルテ陣営との情報戦を経験した2025年にはさらに、社会問題を批判的に見て、誤りや欺瞞を見抜き、自由を守る市民としての役割を果たすよう求めた。今年の演説では、若者に比の海洋上の権利がどこから来るのか、なぜ重要なのかを教えることを訴え、真実を広め、偽情報に対抗することまで国民的責任の一部として位置付けた。








