フィリピン新聞

マニラ
35度-26度
両替レート
1万円=P3,820
$100=P6130

歴史的一歩か、妥協の産物か 下院で可決の「反世襲法案」

1663字||社会|新聞論調
新聞論調
新聞論調

 現在の上院議会は、発砲事件などで傷ついた評判に加え、その議員構成こそが「反世襲法案」を可決しなければならない理由の一つである。上院では4組の兄弟姉妹が議席を占めており、実質的に4つの家族が24人の上院の3分の1を支配していることを意味する。

 今月中旬、上院が史上最悪の事態に陥ったことで、少数の世襲一族による権力の集中というこの茶番劇が明らかになった。そのきっかけとなったのは、兄妹コンビによる指導部の交代、上院警備隊による「銃撃戦」とされる騒動、そして国際刑事裁判所から指名手配されていた上院議員の逃走だった。

 もちろん、より規模の大きい下院はかねてより政治世襲の牙城であり、それがまさに、政治世襲を禁止することで公職への機会均等を保障するという1987年憲法の規定を実施するための施行法が未だに可決されていない理由である。

 非営利の比調査報道センターによると、下院議員の10人に8人が政治家一族に属している。政府系の比開発研究所が2015年に実施した調査では、選出された州知事の85%、副知事の75%、州議員の74%、市長の66%が伝統的政治家一族によって占められているとの推計が示された。

 数ヶ月にわたる議論と公聴会を経て、下院は先週第2読会、月曜日に第3読会(最終読会)を経て、下院法案第8389号を可決した。同法案は、配偶者および2親等以内の血族・姻族が、国、州、市・町、バランガイの各レベルにおいて、選挙による公職に同時に立候補したり、その職に就いたりすることを禁止するものである。

 この反世襲法案は、ディー3世下院議長と現大統領の息子フェルディナンド・アレクサンダー・「サンドロ」・マルコス与党院内総務が主提案者となり、173名の議員が共同提案者として名を連ねた。

 下院選挙権・選挙制度改革委員会の委員長であり、本法案の可決を主導した南ラナオ州第1選挙区選出のジア・アロント・アディオン議員は、「今日、私たちは歴史をつくる機会を得た。40年もの歳月をかけて憲法上の義務を果たす」と語った。

 マルコス大統領は、昨年7月の施政方針演説で明らかにした、数十億ペソ規模の洪水対策汚職に対処する改革の一環として、反世襲法の早期成立を議会に正式に要請していた。

 しかし、下院法案8389号は圧倒的多数で可決されたものの、真に効果的な「反世襲法」として期待された水準には達しなかった。一部の議員が提出した法案では、4親等以内の親族を禁止対象とし、対象となる公職の範囲を拡大することを求めていたのだ。しかし、アディオン議員は、下院委員会が「改革と民主主義の原則との間の慎重なバランス」を図るため、2親等までの禁止で妥協したとし、「我々の任務は、単に可能な限り制限的な定義を策定するだけでなく、憲法に則り、実用性があり、本会議や裁判所での精査に耐えうる定義を作り上げることにある」と述べた。

 中央選挙管理委員会のデータによれば、一部の下院法案が可決されれば、政治王朝の禁止によって最大5000もの公職が空席になるという。同氏は、4親等以内の親族を対象とすることは、選管にとって「運営上の悪夢」になると述べている。

 下院の議会政策・予算調査局の推計によると、2025年の選挙で立候補届を提出した4万3033人を対象とした場合、下院法案に基づく2親等以内の制限では約94万6726件の追加書類の処理が必要となり、4親等以内の禁止となればその数は284万件以上に膨れ上がる可能性があるという。

 国内の貧困や悪政を永続させる政治王朝を終わらせるような「反世襲法」の制定には、確かに多くの課題が残されている。しかし、わが国の政治体制は、そのような犠牲を払う準備がまだ整っていないのだ。

 せいぜい、下院の法案は、わが国の進歩を阻み、私利私欲のために国庫を食い潰しているこれらの怪物たちを排除するという究極の目標に向けた、現実的な第一歩といったところだろう。(5月26日・インクワイアラー社説)

社会