「前議長を複数訴追」 「親族切り」で浄化強調、SONA
治水汚職疑惑で行政監察院がロムアルデス氏への複数訴追を準備。大統領がSONAで言及
マルコス大統領は27日、5回目の施政方針演説(SONA)の最初に、治水事業を巡る汚職疑惑に関連し、行政監察院がマーティン・ロムアルデス前下院議長に対する複数の訴追を準備していると述べた。ロムアルデス氏は大統領の母方のいとこで下院を仕切っていた「盟友」。マルコス氏はときに声をふるわせ、「私は家族の大統領でも、友人の大統領でもない。フィリピンの大統領だ」と強調した。
昨年のSONAから始まった治水汚職を巡る混乱から1年の節目で、自分の近しい親族であるロムアルデス氏に対し、「泣いて馬謖を斬る」ことを強調することで、汚職問題の根幹にあるネポティズム(縁故主義)へのクリーンさをアピールするとともに、一定の「けじめ」の印象づけを図った格好だ。
大統領は、政府が「誰にも偏らない広範で徹底した捜査」を行い、証拠の示す先を追ったと説明。「業者、高官、国会議員の中から、すでに訴追された者や身柄を拘束された者が出ている」と報告。
その上で、行政監察院から前議長に対する複数の訴追が近いとの報告を受けたと表明。「私にはつらいことだが、正しいことをしなければならない」と述べた。
マルコス氏は2025年7月の4回目のSONAで、巨額の予算を投じたにもかかわらず洪水被害が続いているとして、治水事業の徹底調査を指示。その後、公共事業道路省などが集めたロムアルデス氏らに関する情報を行政監察院に引き渡し、捜査を委ねる方針を示していた。
ロムアルデス氏は、治水事業の不正への関与を一貫して否定している。
▽中東情勢に多く割く
治水汚職の次に強調されたのは、中東情勢とそれに端を発する石油危機問題。大統領は、政府は国家エネルギー非常事態を宣言し、対策全体を「UPLIFT」と位置付けたことを説明。政府機関に経費節減を命じ、汚職事業から救済した予算を生活支援に振り向けたと説明。地方自治体に約580億ペソを追加配分したと報告した。
紛争勃発後に海外就労者1万2000人超を帰国させ、約14万人には食料、現金、医療、避難場所などを提供し、帰国後は就業・生計支援を行ったとした。
さらに、帰国した教員資格を持つ労働者を公立学校で採用する方針も提示。議会には、中間層の手取りを増やすため、所得税の非課税枠を年間所得35万ペソに拡大することを求めた。
演説会場で最も大きな反応を得たのが、送配電中の電力損失と、その付加価値税を消費者に転嫁させないため、電力産業改革法を改正するとの表明だった。家庭用太陽光発電と蓄電池の導入を容易にする「自家発電法案」の成立も求めた。
▽「サル動画」騒動も取り入れ
終盤では、中国国営メディアがフィリピンをサルに描いた「中傷動画」を念頭に、中国の名指しは避けながら「フィリピン人は貪欲でも、人種差別主義者でも、うそつきでもない」と強調。
2016年南シナ海仲裁判断の10周年に触れ、同判断は最終的かつ法的拘束力を持ち、国連海洋法条約の解釈・適用の基準になるとした。
最後に、任期の残り2年間で着手済み事業を完成させ、公約を果たすと表明。演説全体を「国の安全保障と自給力」「汚職資金を国民生活へ戻す」「危機対応から中長期投資へ」という主題で締めくくった。
▽今年のSONAの主な内容
(新規表明)
年間所得35万ペソ以下の所得税免除と、他の所得層の税率引き下げ
小規模事業者への最低法人所得税廃止と、未納税・罰金への恩赦
送電損失と付加価値税の電気料金への転嫁禁止
家庭用太陽光発電と蓄電池の導入を促す自家発電法
原子力発電の再検討と、水素発電・蓄電設備の整備
2027年の南北通勤鉄道一部区間と鉄道7号線12駅の開業
公立校への相談員補助1万人配置と、1万6000教室超の建設
AI産業拠点、国内初の宇宙港、ワクチン研究所の整備
(実績)
治水汚職での業者、高官、国会議員の起訴・拘束
行政監察院による前下院議長への複数事件の提起準備
資金・財産約250億ペソの回収・凍結・保全
中東から海外比人労働者1万2000人超を帰国
政府備蓄米2万6000トン超を250万世帯超に配布
発電事業45件の完成と、マランパヤで8年ぶりの掘削再開
患者負担ゼロ制度を約300万人、医療費支援を800万人超が利用








