フィリピン新聞

マニラ
32度-25度
両替レート
1万円=P3,920
$100=P6260

「妥結点見出す話し合いを」 四半世紀続く比トヨタ労働争議、日比で抗議活動

2294字|||社会

比トヨタの労組が2001年から続く200人超解職問題で日比で抗議活動。争議開始から四半世紀

マカティ市のGTタワー前で抗議活動を行った比トヨタの元従業員ら
マカティ市のGTタワー前で抗議活動を行った比トヨタの元従業員ら=5日午前、主催者提供

 トヨタモーターフィリピン労働組合(TMPCWA)は5日、日本のトヨタ本社とトヨタフィリピンに対し、2001年に一斉解雇された元従業員に対する補償金の支払いを求めるデモを行った。マカティ市の比トヨタ管理事務所が入居するビルの前では、元従業員20人超が「解雇された従業員に正義を」「日本政府は国際労働機関(ILO)の勧告を尊重せよ」などとプラカードを掲げ、声を上げた。TMPCWAによると、同日、日本のトヨタ本社前でも組合幹部が日本側の支援者とともに抗議活動を行った。

 比トヨタが、労働雇用省前での集団行動に伴う無断欠勤などを理由に220人超を一斉解雇したのは2001年3月。組合側は、解雇された元従業員への補償を求める活動を四半世紀続けている。争いの舞台は労働雇用省、最高裁、国際労働機関(ILO)、さらには日本の労組と連携して日本でも抗議活動を行うなど、日系企業の労働争議の中でも異例の広がりを見せてきた運動だ。

 一時は刑事訴追にも発展するなど、複雑な経緯をたどってきたこの労使争議だが、国内的には最高裁が07年に比トヨタ側の解雇を有効と判断。一方、ILOは最高裁決定後も、適切な補償を巡り労使の交渉を促すよう比政府に繰り返し求めている。昨年6月の最終報告でも、労使を交渉の場につかせるための措置を続けるよう政府に求め、事案の審査を終了した。

 TMPCWAはフィリピン新聞の取材に対し、今回の2カ国抗議活動のねらいについて、「25年間続く労働争議を公正に解決するよう求めたILOの勧告に対し、トヨタが何の回答もしていないことに抗議するため。ILOはすでに3回、問題解決を求めている」と説明。「比政府は組合を支援するための対応を既に始め、労働雇用省(DOLE)に対し、問題解決を求める書簡を比トヨタに送るよう直ちに指示している。しかし、今日までトヨタ側から返答はない」と述べた。

 2015年5月に比政府がILOに報告したところによると、組合側は当初、解雇された233人全員の未払い賃金や離職補償、訴訟費用として総額10億ペソを要求し、その後6億ペソに減額。一方、比トヨタ側は、会社の資金援助をまだ受け取っていない75人に対し、総額800万ペソ超を支払う用意を示した。

 「補償金に関し、会社側と組合側の提示額には大きな開きがあると承知しているが、組合としては妥結点を見出す交渉の意思はあるか。比トヨタ側は交渉に応じているか」。

 この質問に対し、TMPCWAのジョーイ事務局長は、「組合は常にオープンだ。双方の相違点について話し合うため、テーブルにつく用意がある」と明言。「しかし、トヨタ経営側はそうした交渉に前向きではない」とした。その上で、「この長期労働争議を解決するため、あらゆる手段を模索している。比国内には解決を妨げる多くの政治的要因があると考えており、この問題を最終的に解決できるのは日本の親会社だけだと考えている」と語った。

 ▽「解決」遠く、四半世紀

 四半世紀に及ぶ争議の発端は、2000年3月。比労働法第257条(現269条)に基づき、同社の一般従業員が団体交渉代表となる組合を決めた「認証選挙」だ。1998年に労働雇用省に登録されたTMPCWAは、503票を得て反対(440票)を上回る。ただその際に、監督職か一般従業員かを巡って資格が争われた105票が未開票となったため、会社側が結果を争った。

 調停に入った労働雇用省は組合側に軍配を上げ、同年5月に団体交渉代表として認定。それに対し会社側は上訴し、それが退けられると再考を申し立て、団体交渉開始を拒否した。審理が続く01年2月、組合員らは労働関係局の公聴会に合わせて集団行動を実施。200人超が欠勤して労働雇用省前などで抗議した。会社側は操業に大きな支障が出たとして処分手続きを開始。3月16日、労働雇用省は会社側の再考申立てを却下。同日、会社側は組合員227人(後に233人)を解雇、64人を停職処分した。

 これに反発した組合側は解雇撤回を求めピケに入る。最高裁記録によると、3月28日以降は2工場の門を封鎖し、従業員らの出入りを阻止。これに対し、会社側に立った監督職従業員らが「威圧行為があった」などとして組合幹部らを刑事告発する事態に発展した。

 最高裁は07年10月、解雇に先立つ01年2月の集団欠勤・抗議について、「団体交渉を巡る労働争議の中で操業を停止させた実質的なストであり、法定のスト手続きを踏まず会社規則にも違反した」と認定。227人の解雇を有効とした。解雇後の3~5月の争議についても、工場門の封鎖や出入り妨害、労働雇用相の命令違反などを理由に違法と判断。退職補償も認めなかった。

 その一方、刑事事件は長期化し、13年5月、告訴人側が訴えを取り下げたことなどを受け、裁判所が事件を永久却下。逮捕状も取り消された。

 争議は日本にも波及し、04年には同労組が全日本造船機械労働組合(全造船)関東地方協議会の神奈川地域労組に加盟し、日本のトヨタ本社などへの申し入れや抗議行動を続けた。

 組合は並行してILOにも申し立てを行っていたが、ILOは03年、復職が困難な場合は「適切な補償」による解決を政府に勧告。07年の最高裁の解雇有効判断後もこの立場を維持した。

 昨年6月に出されたILOの最終報告では、233人中158人が会社の金銭支援を受けた一方、75人が未受領とし、政府に双方が受け入れられる解決への努力継続を求めて事件の審査を終了した。

社会