暴力や組織の圧力に屈せず投票の実現を せまるバンサモロ初の議会選挙
「投票は銃弾よりも強い。」――アブラハム・リンカーン
バンサモロの人々が初の総議会選挙に臨むまであと1か月を切る中、再び銃声が鳴り響いた。8月15日、バンサモロ自治区政府の暫定首相、アブドゥルラオフ・マカクア氏の車列が、北マギンダナオ州ダトゥオディンシンスアット町の国道沿いで待ち伏せ攻撃を受けたのだ。車両は被弾したが、同氏と同行者たちは無傷で逃れた。
襲撃は、9月14日の議会選挙に立候補者を多数出しているバンサモロ連邦主義党(BFP)の党首にマカクア氏が就任してからわずか数時間後に発生した。ソーシャルメディア上では、待ち伏せ攻撃が仕組まれたという主張や、襲撃の存在自体への疑念など、相反する説が瞬く間に広まった。しかし、信頼できる証拠は確認されていない。国家警察は、選挙関連事件の疑いとして捜査している。捜査当局は、発砲者、襲撃を命じた者やその動機を明らかにしなければならない。
9月14日の選挙は、歴史的な転換点となるはずだ。長年にわたる交渉、武力闘争、和平協定、そして移行期の統治を経て、バンサモロの人々はついに自らの議会を選出することになる。この選挙は、武力闘争から民主的な競争へ、革命的正当性から選挙による正当性へ、そして銃から投票へと移行する変革である。
7月16日から銃器携帯禁止令が発効している。検問所が設置され、治安部隊が配備された。しかし、それだけでは、何世代にもわたって築き上げられてきた武装を伴なう政治文化を一掃することはできない。和平プロセスは、モロ・イスラム解放戦線(MILF)を反乱から民主的な統治へ導くという、並外れた成果を成し遂げたが、政治的慣習を変革するには、さらに長い時間がかかるということだ。
変革のもう一つの側面もある。8月23日、MILF中央委員会は大規模な「ダアワ」(総会)を招集し、約1万人の成員が参加して、同組織のプログラムや組織体制について議論したと報じられている。この集会は、MILFが依然として動員能力を有していることを示した。また、数十年にわたる武装闘争を経て形成された運動が、民主的な制度の枠組みの中で活動する機会が増えるにつれ、どのような課題に直面しているかも浮き彫りにした。
8月15日、暫定首相の車列が銃撃にさらされ、その8日後、MILFが数千人を集めた集会を実施。9月14日には、バンサモロの市民たちが投票所に集まることが見込まれている。銃弾や組織、そして投票は、政治的権力を行使する極めて異なる方法を象徴している。バンサモロの将来は、どの方法が正当性を得るかに左右されるだろう。
マカクア氏自身、この移行期の複雑さを体現している。MILF(モロ・イスラム解放戦線)の幹部指導者であり、同組織のバンサモロ・イスラム武装部隊の元参謀長である彼は、2025年3月にマルコス大統領によって暫定首相に任命された。現在は同氏がBFP(バンサモロ人民戦線)を率いる一方、MILF傘下の「統一バンサモロ正義党」が同じ選挙で議席を争っている。
評価すべき点として、MILFは意見の相違にもかかわらず、マカクア氏襲撃を非難し、公平な調査を求めた。これこそが民主主義政治に求められる姿勢である。政治的対立者は敵ではなく、競争相手でなければならない。
9月14日の選挙は予定通り実施されるべきだ。バンサモロの人々が長年待ち望んできた選挙を、再延期することで、暴力に報いるようなことがあってはならない。しかし、成功は、投票所の開設や票の集計だけで測れるものではない。候補者が威圧されることなく選挙運動を行えるか、有権者が自由に選択できるか、そして敗北した政党が結果を受け入れるかどうかも、成功を測る基準となる。
9月14日、バンサモロの和平プロセスは、一般市民が恐怖を感じることなく投票できるかどうか――たとえ指導者や組織、氏族の選択と異なっていたとしても、個々の選択が尊重されるかどうかで、成否が問われるだろう。
確かに、投票は銃弾よりも強い力を持つ。しかし、それは人々が自由にそれを行使できる場合に限り、そう言えるのだ。(8月30日・マニラタイムズ、ラライ・ラモス・ヒメネス氏)








